デザイナーの後輩がセンスない問題、どうすれば解決できる？現役DTPデザイナーが教える育成術

デザイン事務所で働くあなた、後輩のデザイナーの「センスのなさ」に頭を悩ませていませんか？期待して採用したものの、なかなか思うように成長してくれず、どのように指導すれば良いのか途方に暮れているかもしれません。今回の記事では、そんなあなたの悩みを解決するために、具体的なアドバイスと実践的な方法を提案します。長年DTPデザイナーとして活躍してきた私が、後輩デザイナーの育成における課題と、それを乗り越えるための具体的なステップを、豊富な事例と共にお伝えします。

私は小さなデザイン事務所でDTPデザイナーをやっています（５年目・２７歳）。パンフレット・カタログ・パッケージデザインなどが主な仕事です。

去年の７月に中途採用した女性がどうにもこうにもセンスがなくて困っています。彼女は現在２５歳で、大学→デザイン系専門学校という経歴で、中途採用になったのは卒業しても職が見つからず７月になってしまった…という状態だったためらしいです。

もちろん、初めからデザイン技術を求めてはおらず、最初は本当に簡単なデザインをやってもらいながら１年が経ちましたが…。とにかくデザインに関するセンスがない、としか言いようがない状態です。もう簡単なデザインなら出来るかな、と思いやらせてみると、色も配置もなんでそんな…？という感じです。

まだ１年ちょいだし…と思われるかもしれませんが、ウチのような小さな事務所にしてみれば、１年である程度まで出来てもらわないと困ります。実際、新卒で入った私も、他の後輩たちも、１年である程度までは任せてもらえました。私にとっては初めて面倒をみている相手で、正直、教え方も分からず、上司や先輩にいろいろ相談して、一緒に見てもらったり、一緒に指導してもらったり、皆でおすすめの資料本も買ったりしました。

が、それでも駄目です。それでもまだ、なんでそんな所にそんなものを？なんでそんな文字の配置で良しと言えるの？具体的に書くのが難しいのですが…なんでそんな？と思うことばかりです。１年半経つのに他の社員の半年分も来ていない感じです。社長の方針で辞めてもらうことは出来そうにない以上、力をつけてもらわないと困るんですが…。

このようなセンスのない人にセンスを持ってもらうには、どうしたらいいでしょうか？「服のセンスからして無い」などとも言われていて、そこから何かを変えられるものでしょうか？

1. 現状分析：なぜ後輩デザイナーは「センスがない」のか？

まず、問題の本質を理解することが重要です。後輩デザイナーが「センスがない」と感じる原因は、単に才能がないから、と一言で片付けられるものではありません。様々な要因が複雑に絡み合っている可能性があります。以下に、考えられる主な原因をいくつか挙げ、それぞれに対する具体的な対策を提示します。

1-1. 基礎知識の不足

デザインには、色、タイポグラフィ、レイアウトなど、基本的な知識が必要です。専門学校を卒業していても、必ずしも全ての知識が十分に習得されているとは限りません。特に、実務経験が少ない場合、知識が実践に結びついていないことがあります。

対策:
デザインの基礎講座の受講: 基礎知識を体系的に学ぶためのオンライン講座や書籍を推奨します。例えば、色に関する基礎知識を学ぶために、色の三属性や配色理論について解説した書籍を一緒に読み進めるのも良いでしょう。
参考資料の提供: 優れたデザインの参考資料（デザイン本、Webサイト、雑誌など）を積極的に提供し、どのようなデザインが良いのかを具体的に示します。

1-2. 経験不足とアウトプットの少なさ

デザインは、経験を通して磨かれるスキルです。アウトプットの量が少ないと、改善点を見つける機会も減り、成長が遅れます。また、フィードバックを受ける機会が少ないと、自分のデザインがどのように評価されているのか分からず、改善の方向性を見失うことがあります。

対策:
簡単なタスクからのスタート: 最初は、簡単なバナー作成や既存のデザインの修正など、比較的取り組みやすいタスクから始め、徐々に難易度を上げていくことで、自信をつけさせます。
ポートフォリオの作成: 制作したデザインをポートフォリオとしてまとめ、定期的に見直す機会を設けます。ポートフォリオを通じて、自分の成長を可視化し、モチベーションを高めます。
フィードバックの徹底: 制作物に対して、具体的かつ建設的なフィードバックを行います。良い点と改善点を明確に伝え、どのように改善すれば良いのかを具体的にアドバイスします。

1-3. 思考力の欠如

デザインは、見た目の美しさだけでなく、目的を達成するための戦略的な思考も必要です。クライアントの要望を理解し、ターゲット層に響くデザインを制作するためには、論理的な思考力と問題解決能力が不可欠です。

対策:
デザイン思考ワークショップ: デザイン思考のワークショップに参加させ、問題解決のプロセスを学びます。
クライアントとの打ち合わせへの同席: クライアントとの打ち合わせに同席させ、デザインの意図や背景を理解させます。
デザインコンセプトの明確化: デザインを制作する前に、デザインの目的、ターゲット層、伝えたいメッセージなどを明確にするよう指導します。

1-4. コミュニケーション能力の不足

デザインは、クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションを通して進められます。自分の考えを的確に伝え、相手の意見を理解する能力が不足していると、誤解が生じ、質の高いデザインを生み出すことが難しくなります。

対策:
プレゼンテーションスキルのトレーニング: 自分のデザインを説明するプレゼンテーションスキルのトレーニングを行います。
ロールプレイング: クライアントとのやり取りを想定したロールプレイングを行い、コミュニケーション能力を向上させます。
チーム内での意見交換: チーム内での意見交換の場を設け、積極的に意見を交換する機会を作ります。

2. 具体的な育成ステップ：後輩デザイナーを成長させるためのロードマップ

後輩デザイナーの育成は、短期間で劇的な変化を期待できるものではありません。長期的な視点に立ち、段階的にスキルアップを図るためのロードマップを作成し、計画的に指導を進めることが重要です。以下に、具体的な育成ステップを提示します。

2-1. 初期段階：基礎知識の定着と実践練習

入社から最初の3ヶ月は、基礎知識の定着と実践練習に重点を置きます。この期間は、デザインの基礎を学び、基本的なスキルを身につけるための土台作りです。

ステップ1：デザイン基礎講座の受講
内容: 色彩理論、タイポグラフィ、レイアウトの基本など、デザインの基礎知識をオンライン講座や書籍で学びます。
目標: デザインの基礎知識を理解し、デザイン用語を正しく使えるようになる。
ステップ2：簡単なタスクへの挑戦
内容: バナー作成、既存のデザインの修正など、比較的取り組みやすいタスクから始めます。
目標: デザインツール（Illustrator、Photoshopなど）の基本的な操作に慣れ、簡単なデザインを制作できるようになる。
ステップ3：ポートフォリオの作成とフィードバック
内容: 制作したデザインをポートフォリオとしてまとめ、上司や先輩からフィードバックを受けます。
目標: 自分のデザインの強みと弱みを理解し、改善点を見つける。

2-2. 中間段階：応用力の習得と実践的なプロジェクトへの参加

入社から6ヶ月〜1年は、応用力を習得し、実践的なプロジェクトに参加する段階です。この期間は、基礎知識を活かし、より複雑なデザインに挑戦し、実務経験を積むことが重要です。

ステップ1：実践的なプロジェクトへの参加
内容: 実際のクライアントワークの一部を担当し、デザイン制作のプロセスを経験します。
目標: クライアントの要望を理解し、デザインに落とし込む能力を養う。
ステップ2：デザインコンセプトの策定
内容: デザインを制作する前に、デザインの目的、ターゲット層、伝えたいメッセージなどを明確にする練習をします。
目標: デザインの意図を明確にし、論理的な思考力を養う。
ステップ3：プレゼンテーションスキルの向上
内容: 自分のデザインを説明するプレゼンテーションの練習を行い、フィードバックを受けます。
目標: 自分のデザインを論理的に説明し、クライアントやチームメンバーに理解してもらう能力を養う。

2-3. 最終段階：自立と継続的なスキルアップ

入社から1年以上経過した段階では、自立してデザイン業務をこなし、継続的にスキルアップを図ることが目標です。この期間は、自己学習を継続し、新しい技術やトレンドを積極的に取り入れることが重要です。

ステップ1：自己学習の習慣化
内容: デザイン関連の書籍、Webサイト、オンライン講座などを活用し、自己学習を継続します。
目標: 最新のデザイン技術やトレンドを習得し、自己成長を続ける。
ステップ2：専門性の深化
内容: 自分の得意分野を見つけ、専門性を高めるための学習や実践を行います。
目標: 特定の分野で専門性を高め、デザインの質を向上させる。
ステップ3：チームへの貢献
内容: チームメンバーと協力し、プロジェクトを成功に導くための貢献をします。
目標: チームの一員として、積極的に貢献し、リーダーシップを発揮する。

3. 効果的な指導方法：後輩デザイナーの成長を加速させるために

後輩デザイナーの育成には、単に指示を出すだけでなく、効果的な指導方法を用いることが重要です。以下に、具体的な指導方法をいくつか紹介します。

3-1. 具体的なフィードバック

抽象的なフィードバックではなく、具体的なフィードバックを心がけましょう。「良い」や「悪い」だけでなく、具体的にどこが良いのか、どこを改善すべきなのかを伝えます。例えば、「この文字のサイズは小さすぎるので、もう少し大きくした方が読みやすくなります」といった具体的なアドバイスが効果的です。

3-2. 成功体験の積み重ね

小さな成功体験を積み重ねることで、後輩デザイナーの自信を育むことができます。簡単なタスクをこなし、褒めることで、モチベーションを高め、次のステップへの意欲を引き出します。

3-3. 質問を促す環境作り

後輩デザイナーが質問しやすい環境を作ることも重要です。分からないことがあれば、気軽に質問できるような雰囲気を作り、積極的に質問することを促します。質問に対しては、丁寧に答え、理解を深めるようにサポートします。

3-4. 模範となるデザインの提示

優れたデザインを参考にすることで、デザインの質を向上させることができます。模範となるデザインを提示し、どのような点に注目すべきか、具体的に説明します。また、参考資料としてデザイン本やWebサイトなどを紹介し、自己学習を促します。

3-5. 定期的な面談

定期的に面談を行い、進捗状況や課題を共有します。目標設定を行い、達成度を確認することで、モチベーションを維持し、成長を促します。面談では、悩みや不安を聞き、適切なアドバイスを行います。

4. 服のセンスとデザインセンスの関係性

質問者の方は、「服のセンスがない」ことがデザインセンスにも影響するのではないか、という意見に疑問を感じているようです。デザインセンスと服のセンスには、ある程度の共通点があります。どちらも、色使い、バランス、トレンドへの理解などが重要です。しかし、服のセンスがないからといって、デザインセンスがないとは限りません。デザインセンスは、知識、経験、思考力など、様々な要素によって培われます。服のセンスは、あくまで一つの要素であり、デザインセンスを測る絶対的な指標ではありません。

もし、後輩デザイナーが服のセンスに自信がないようであれば、服のデザインに関する書籍やWebサイトを紹介し、ファッションに関する知識を深めることを勧めるのも良いでしょう。ファッションは、デザインのインスピレーション源の一つとなり、デザインセンスを磨く上で役立つ可能性があります。

5. 成功事例：後輩デザイナーを育成し、チームを成長させた事例

実際に、後輩デザイナーを育成し、チーム全体のデザイン力を向上させた事例を紹介します。

5-1. 事例1：基礎知識の徹底と実践練習による成長

あるデザイン事務所では、新入社員のデザインスキルが低いという課題を抱えていました。そこで、基礎知識を徹底的に教え込み、実践練習を重視した育成プログラムを実施しました。具体的には、

デザインの基礎知識を学ぶための研修を実施
簡単なタスクから始め、徐々に難易度を上げていく
先輩デザイナーによる丁寧なフィードバック

これらの取り組みの結果、新入社員のデザインスキルは飛躍的に向上し、1年後には、ある程度のデザインを一人でこなせるようになりました。また、チーム全体のデザイン力も向上し、クライアントからの評価も高まりました。

5-2. 事例2：デザイン思考ワークショップとプレゼンテーション指導による成長

別のデザイン事務所では、後輩デザイナーの思考力とプレゼンテーション能力の不足が課題となっていました。そこで、デザイン思考ワークショップとプレゼンテーション指導を重視した育成プログラムを実施しました。具体的には、

デザイン思考ワークショップに参加させ、問題解決のプロセスを学ぶ
自分のデザインを説明するプレゼンテーションの練習
クライアントとの打ち合わせに同席させ、デザインの意図を理解させる

これらの取り組みの結果、後輩デザイナーの思考力とプレゼンテーション能力が向上し、クライアントとのコミュニケーションも円滑になりました。また、チーム全体のデザインの質も向上し、より高度なプロジェクトに挑戦できるようになりました。

6. まとめ：後輩デザイナー育成は、長期的な視点と継続的な努力が重要

後輩デザイナーの育成は、一朝一夕にできるものではありません。長期的な視点に立ち、計画的に指導を進めることが重要です。基礎知識の定着、実践練習、フィードバック、成功体験の積み重ね、そして、継続的な自己学習を促すことで、後輩デザイナーは必ず成長します。そして、後輩デザイナーの成長は、チーム全体のデザイン力の向上につながり、事務所全体の発展に貢献します。根気強く、後輩デザイナーをサポートし、共に成長していきましょう。

今回の記事で紹介した方法を参考に、後輩デザイナーの育成に取り組み、デザイン事務所の未来を切り開いてください。

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